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執筆者の写真山田功

外国人材の雇用についての留意点~会社側の準備~


外国の人材の新制度「育成就労」の新設等を柱とする改正出入国管理法などが、令和6年6月14日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。技能実習制度に代わり「育成就労制度」という新たな制度が新設され、従来の技能実習制度は経過(併存)期間(3年間)終了後、廃止されます。新制度は、法律公布後3年経過後(令和9年)から施行されます。


人手不足に困ってはいるけれど、外国人材の雇用のことはよく分からないから採用できない――」そんな経営者のあなたに、今回は会社側が構築すべき体制(コスト)、そしてそのコストを軽減できる助成金を一つ、解説いたします。


目次


就労可能な人材は

まず、そもそもどのような外国人が日本で就労できるのでしょうか。外国人は出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)における在留資格の範囲内で、日本における活動が認められています。現在27種類の在留資格がありますが、以下の就労の観点から3分類に分けられます。

(1)定められた範囲内で労働ができるもの

外交、公用、教授、芸術等に分類されていますが、一般の企業においては、次の4種類が多いとされています。 ア 技術 ・・・・IT関連技術、自動車設計技師等 イ 人文知識、国際業務 ・・・・通訳、語学の指導、デザイナー等 ウ 企業内転勤 ・・・・本邦以外に所在する企業で働く外国人が転勤により、日本の事業所で勤務する場合エ 技能 ・・・・中華料理・イタリア料理等のコック


(2)原則として認められない在留資格

ア 文化活動 イ 短期滞在(観光等) ウ 留学(※) エ 研修 オ 家族滞在(※)

※「留学」及び「家族滞在」の在留資格を持つ方は、原則として1週28時間までの労働が可能です(風俗営業等は不可)。この場合、「資格外活動」として地方入国管理局の許可を受けなければなりません。また、「留学」の在留資格を有する場合、その方の留学している教育機関が夏休みなどの長期休暇期間中は、1日8時間まで労働することができます。事業主は、これらの在留資格を有する方を雇用する場合は、事前に「旅券の資格外活動印」又は「資格外活動許可証」などにより、就労の可否及び就労可能な労働時間について確認する必要があります。

(3)就労活動に制限がない在留資格

ア 永住者 イ 日本人の配偶者等 ウ 永住者の配偶者等 エ 定住者これらの在留資格を有している方は、就労活動に制限はありません。 参考:在留資格一覧表https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/qaq5.html

以上のような分類がありますが、それぞれの認定については個別に審査されます。そのため、公表されている審査基準はもちろん、入管や申請取次行政書士等と相談の上、「そもそも在留資格(ビザ)を得られるのか」を事前に見極める必要があります。今回の記事では割愛し、「まず自分の会社で必要な体制を構築できるか」「どのような点に留意すべきか」という視点で体制構築や助成金を解説いたします。


適用される労働・社会保険法令等

外国人材を募集し雇用する場合、日本人の労働者と同様に、労働基準法、労働契約法等の労働法令、健康保険法、厚生年金保険法等の社会保険関係が適用されます。最低賃金法も適用されます。以下で特に注意すべき点について解説します。

(1)募集について

求人を募集する際に、応募者を外国人のみに限定することや外国人を応募の対象から除外することはできません。すなわち、国籍を条件とするのではなく、募集する職種に求められる労働能力(スキル)を条件として、募集することが必要です。

(2)採用面接について

公正な選考による採用面接の観点及びプライバシーへの配慮から、採用面接の時に、国籍等の質問は行わないようにしましょう。在留資格の確認は、自己申告による書面の提出で行うようにします。採用を決定した後に、在留カードの提示を求めて、在留資格や在留期間の確認等を行います。

(3)適切な労務管理

採用後の労務管理についても、国籍による差別的取扱はしてはいけません。賃金、休暇、休日等の労働条件について、他の労働者と同様に、書面等により明示することが必要です。外国籍であるからという理由で、賃金を低く設定することもできません。労働者に対する福利厚生や教育訓練についても、差別的な取扱いをしてはいけません。

(4)健康保険・厚生年金保険が適用されない事業所

健康保険や厚生年金保険が適用とならない事業所の事業主は、外国人労働者に対して、国民健康保険や国民年金に係る制度の周知をして、該当する社会保障制度に加入するように勧奨する努力義務があります。

(5)母国語による説明を行うなど、理解の促進に努めること

労働条件、就業規則、安全教育など就労に関する説明は、通訳、翻訳(機)を使うなど、その外国人の母国語を使用し、理解の促進に努める必要があります。

外国人雇用状況の届出義務

労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)第28条により、外国人を雇用する事業主は、雇用及び離職に際し、氏名、在留資格などを所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に届け出る必要があります。届出の対象となる外国人は、在留資格の「外交」、「公用」以外の外国人です。なお「特別永住者(在日朝鮮・韓国人)」の方は、法的に特別な地位が与えられているため、この届出の対象外です。

(1)雇用保険の被保険者資格にかかわらず届出が必要

雇用保険の被保険者に該当する否かは、労働時間等(※)により判断されますが、この届出は被保険者か否かにかかわらず必要です

※雇用保険の被保険者の要件 ・週所定労働時間が20時間以上 ・31日以上継続して雇用の見込み ・学生でないこと

(2)被保険者資格を有しない外国人の場合

雇用保険の被保険者資格を有しない外国人の届出は、「外国人雇用状況届出システム」(インターネット)により24時間、365日の届出が可能です。 外国人雇用のルールに関するパンフレット https://www.mhlw.go.jp/content/001261967.pdf 平成19年厚生労働省告示第276号 https://www.mhlw.go.jp/content/000601382.pdf

外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行に対する知識不足や言語の違いなどから、労働条件や解雇等についてトラブルになりやすい傾向にあります。そのため、国が外国人を雇用する事業主に対し、外国人の就労環境の整備を行う経費の一部を助成する制度があります。対象となるのは以下の経費です。

(1)通訳費 (2)翻訳機導入費(上限10万円) (3)翻訳料 (4)社会保険労務士等への委託料(※) (5)社内標識類の設置・改修料(多言語の標識類に限ります。)

※ 外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限ります。


主な受給要件は以下のとおりです。 (1)外国人労働者を雇用している事業主であること (2)認定を受けた就労環境整備計画(事業者自身または社労士が作成・提出し認定を受けます)に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること   1 雇用労務責任者の選任   2 就業規則等の社内規程の多言語化

以下3~5のうち、いずれかを選択   3 苦情・相談体制の整備   4 一時帰国のための休暇制度の整備   5 社内マニュアル・標識類等の多言語化


さらに、(3)就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であることであることも求められます。


助成額は、賃金UPなどの要件を満たした場合、支給対象経費の3分の2(上限額72万円)が助成されます。 参照1:https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001079869.pdf 参照2:https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001079870.pdf

まとめ

政府の行う少子化対策が効を奏するにしても、その効果が労働人口増につながるのは、2~30年はかかります。「仕事はあるのに人手がいない」のは、建設、介護、製造など現業が中心となっています。 結局のところ、外国人特有で必須となる手続き等はハローワークに対する「外国人雇用状況の届出義務」のみとなります。しかしながら、その他の努力義務やガイドラインも助成金を活用する上では事実上必須の取り組みです。外国人材のための環境整備は労基や入管など行政から厳しい目を向けられないためにはもちろん、人材の定着によって生産性の向上に寄与することは言うまでもありません。 この記事で解説した内容は、法令等で定められたものです。外国人を雇用する上で遵守しなければならないものです。経費はかかりますが、避けることのできない経費、いわば義務的な経費です。その経費の一部を国が事業主に対して助成してくれるのですから、利用しない手はないでしょう。(社会保険労務士への委託料も助成対象の経費となっています) これらの事項をあらかじめ作成した雇用環境整備計画に従って実施することにより、人材を育成・定着を促進し、売上の増加という好循環を生み出すきっかけになると考えます。雇用環境の整備は、社会保険労務士にお任せください。社会保険労務士は、労働・社会保険保険法令の実務に精通した専門家です。労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請書の作成及び提出等は、法律で社会保険労務士の独占業務であると定められています(社会保険労務士法第2条第1項第1号~同項第1号の3)

※「社労士じゃナイト、できないことがことがある。」


申請取次行政書士は、出入国管理に関する一定の研修を修了した行政書士で、申請人に代わって申請書等を提出できる行政書士です。

適正な採用、雇用管理で助成金を受給して、ますますの売上の増加を目指しましょう。外国人雇用についてのご相談は、ワーズワース行政書士事務所https://www.words-worth-gs.com/)までどうぞ!

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